【そもそも「中・貫・久」とは何なのか】
射法八節は礼儀作法から弓を放つ動作、さらには精神統一の方法までが手順化されたものであり、弓道という競技における肝のような存在であるからです。
射法八節を一通りこなせるようになった弓士が、さらに上の段階に上がるためには「中・貫・久」を学ぶ必要があるでしょう。
「中・貫・久」は弓道に昔から伝わる考え方のひとつで、上級の弓士なら誰もが意識して鍛えている部分です。
「中・貫・久」は一般的に「中りが的確で、貫徹力があり、それが長く続くこと」と訳されます。
これは要するに弓道における「理想的な射」を表した言葉で、「中・貫・久」に則った理想的な射を行うことが弓士にとって、目指すべき永遠のテーマであるともいえます。
これを聞いて「なんだ、単なる考え方の問題か」と軽視してしまう弓士は成長できません。
確かに「中・貫・久」は技術面というよりは精神面に大きく関わる要素ですが、そもそも弓道と精神統一は切っても切り離せない深い関係性にあるものです。
ただ矢を放てばよいというものではなく、的中率を安定させるためには理想的な射を求める姿勢を崩してはいけないのです。
【「中・貫・久」に大きく関わる射法八節の「会」】
「中・貫・久」はあくまで理想的な射を表したものですから、「中・貫・久」を実現させるための専用の技術やポイントがあるというわけではありません。
しかし誤解を恐れずに言うならば、
- 「中・貫・久」を実現するために最も重要なのは射法八節の六節「会」
であると考えられます。
ご存知の通り、射法八節の「会」は引き分けの完了した状態のことを指します。
外見上は大きな動きがありませんが、射法八節における一連の動作のうち最も大きな力を必要とし、最も精神面に影響を受けるのが「会」であるとも言われています。
ざっくり言えば「狙いを定める」ことこそが「会」の役割の一つであり、また狙いを定めるためには精神を最大限に落ち着かせる必要があるのです。
しっかりと狙いを定めることで「的確な中り」を、最大限の力で弦を引くことで「貫通力」を、精神を鎮めることで「安定した射」を得ることができます。
つまり、「中・貫・久」の3つの要素が成功するかどうかは全て、「会」が上手くいくかどうかにかかっていると言っても過言ではないのです。
「中・貫・久」は、それを学んだからといって一朝一夕で見に着くものではありません。
日頃の練習からしっかりと胸の内に「中・貫・久」を秘め、特に「会」を行うときには頭のなかで「中・貫・久」を意識することで、少しづつ身についていくものなのです。
自然と「中・貫・久」を意識した動作を行えるようになれば、きっとアナタの射法八節をひとつ上の段階に成長させることができるでしょう。
【「中・貫・久」と似た考え方について】
今回の記事における「中・貫・久」を知って、違和感を感じた方もいたかもしれません。
なぜなら弓士が目指すべき理想としては、「中・貫・久」よりも「真・善・美」のほうが一般的に有名だからです。
流派や個人によっても異なるのですが、実は弓道における最高目標には「中・貫・久」以外にもいくつかの種類があります。
言っていることはよく似ているのですが、少し考え方が異なるのでそれぞれの意味合いを確認しておいたほうが良いでしょう。
どれが良くてどれが悪いという話では無いので、それぞれを比較して自分に合った考え方を、理想として胸に刻んでおきましょう。
「中・貫・久」
主に日置流印西派が掲げる考え方です。
中りが的確で、貫徹力があり、それが長く続くこと‥と訳されるのが一般的です。
弓士として目指すべき技術的な最終目標とされています。
「真・善・美」
一般的に弓道における最終目標として語られる考え方です。
解釈は様々にありますが、「真の心、善い行い、美しさ」というのが簡単な現代語訳です。
弓道が単に矢を的に当てればよいというスポーツではなく、精神的に成長するための修行道であるという証明でもあります。
「飛・中・貫」
本多流などで最終目標として語られる考え方です。
中・貫・久とほとんど同じですが、中ではなく飛を第一に置いている部分に違いが見られます。
的に当てることよりもまず、まっすぐに「飛ばす」ということを重要視しているのです。
【「中・貫・久」を学ぶためには】
ハッキリ言っておけば、「中・貫・久」は、ただ漫然と練習を重ねていても、手に入る技術ではありません。
「真・善・美」や「飛・中・貫」に関してもそうですが、弓道歴が長ければ理解できるというものでも無いのです。
弓士としての「最終目標」に例えられるくらいですから、簡単でないのは道理ですよね。
ひとくちに「中・貫・久」を学ぶとはいっても、やらなければならないことは山のようにあります。
- 皆中を安定させる
- 射法八節を完璧にする
- 狙った通りに的に当てる
- 貫徹力を上げる…
数え上げればキリがありません。
そこで、「中・貫・久」を学びたいなら上級者の射法八節を見て学ぶのが良いでしょう。
それでも時間はかかりますが、自己流で「中・貫・久」を極めようとするよりは、よっぽど早くコツを掴むことができると思います。
「中・貫・久」については
- 「弓道射法八節習得プログラム」というDVD
がオススメです。
「弓道射法八節習得プログラム」は、天皇杯を二回も制覇した上級弓士・土佐 正明さんが監修した練習用プログラムです。
- 忘れてはいけない弓道における自然体の姿勢とは?
- いついかなる時でも次の動作に備える構えとは?
- どこまでも姿勢を重視して型を崩さず動作するポイント
- 「歩く・座る・回る」…型を極める方法とは?
- 武道全体で最も大事な「礼の重要性」について
- 減点されない入退場の極め方とは?
- 皆中を目指すための足踏みのやり方
といった内容が収録されているので、まだ射法八節を修得していない初心者から、的中率を上げたい上級者の練習用まで様々な層に役立ちます。
しかし特筆すべきは、一般の練習用教材では語られることの少ない「中・貫・久」について詳しく解説されているという点です。
弓道歴の長い弓士であっても、適切に「中・貫・久」を守れる方はそう多くありませんし、増してや指導できるほどの実力を持つ方なんてほんのひと握りです。
しかし天皇杯を二回も制覇した土佐 正明さんであれば、「中・貫・久」を指導する人材として何一つ文句のつけようがないでしょう。
つまり「弓道射法八節習得プログラム」は、DVDを介して「中・貫・久」を学べる非常に貴重なチャンスでもあるのです。
このDVDはネットで購入することも可能ですので、天皇杯制覇者の指導に興味のある方は一度公式サイトをチェックしてみてください。
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- 弓道の稽古初心者が学ぶべきこと
- 正しい稽古を学ぶなら優れた弓士の教えを請うのが一番です。とはいえ、指導者として優れている弓士なんてそう簡単に見つかるものでもありません。調べてみると「弓道上達の極意」という練習用プログラムの評判が良いことが分かりました。「弓道上達の極意」は日置當流師家・徳山弓道場十六代当主の徳山英則さんも推薦している教材で、無駄を削ぎ落して最適化された「正しい稽古」を学ぶことができる貴重なDVDです。ぜひご覧ください。